ロータスエスプリのバルブクラッシュ!(その2)

●EXバルブは曲がってしまったので、当然であるがシートに密着していない。
●インテークポートからCRCを流し込んでみたが、燃焼室側に漏れはない。INバルブは大丈夫そうである。

●ピストンリング3本とコンロッドはS4(正確には92年のエンジンナンバーXXXX以降)から変更されている。 大きな違いはセカンドとオイルリングの形状、コンロッドはスモールエンドの幅の違いである。

●バルブとシートのアタリは走行・カーボンの量を考えれば非常に良いと思う。カーボン噛込みや虫食いも見られず、当たり幅も均一である。

シートのアタリ

●シートのアタリ幅の規定値はIN-1.5mm、EX-1.0mmである。INがEXより広く、通常とは逆である。カットは45度のみで60度、30度のカットがなかった。これはこの個体に限ったことでもなさそうだが。(サービスノートでは通常どおりに60,45,30度カットということになっている)

●シートのスロートからガイド手前までをシート圧入後に機械加工されているようでシートとポート内面の段つきが全くなく均一で綺麗である。

●マニホールド側は鋳型のままであるがその間をリューターによる手作業で修正加工してある。エスプリはノーマル状態でポート内研磨されていると聞いていたが実際はそんなことはなく、機械加工で出来たポート中央部の鋳型との段付きをリューターによる手作業で荒っぽく修正しているにすぎない。

●同時代の国産エンジンのポートは太くて大きなアールの物が多いが、それに比べると直線的でスロートに近づくにつれ小さくなっていく形状でこのあたりは 現代的であると思う。

 

●インテークポートも特に目立った汚れはない。オイル下がりが起こっていたとしてもよほどひどくない限りガソリンで流されてしまうので綺麗である。
●ポート内には通常あるはずのガイドのボリュートが無い。

●少し驚いたのがコンロッドメタルである。オーバーレイの摩耗が走行距離の割に多いような気がする。3番アッパーに異物を引きずったようなキズもある。
●所々小さな斑点状になっているが、これは異物が陥没した跡だろう。クランクピンにキズがつけないようにという役割ははたしている。
●オーバーレイは全体には摩耗はしているが地金が露出しているような箇所はなく、張りも充分に残っている。

コンロッドメタル

●かなり以前、NAで約80,000km走行時にビッグエンドメタルを交換した。取り外したメタルは消耗も少なく当たりも良好だった。また、メタル交換後もオイルクリアランスが全く変わらなかった。結局、交換は全く無駄だった。エスプリのコンロッドメタルは短~中期消耗品だとどこかで聞いていたが、全くそんな気配はなかった。

●クランク、コンロッド、メタルはNA、ターボで共通部品である。燃焼膨張圧の差がそのままメタル摩耗に反映されている。

●ターボの場合は定期交換部品なのかもしれない。

●ウオータージャケット内は冷却水管理が良かったのかきれいである。しかし1番シリンダ左とコアプラグ部分に鋳砂(非常に細かく砕かれ てペースト状になっていた)が蓄積していた。

●洗浄後各部品の損傷具合を確認し、ついでに重量、寸法を測定した。4気筒とはいえヘッドとシリンダのみでも測定時の温度管理等もあり、かなりの時間を要した。
●ピストン、ライナー、ピン、リング、コンロッドは単体、アッセンブルどちらで見ても寸法・重量は驚異的に揃っている。驚異的というのは、例えばコンロッド、ピストンのグレード分けは大雑把に2グレードなのに対し、同一グレード内で1~2グラム、2/100ミリ以内に収まっている。しかも後追加工がほとんどされていない。

大雑把に2グレード

●グレード内でさらにグレード分けされ1台分でセット出荷されているのだろうか。または、管理が良いのはロータスなのかパーツサプライヤーなのか。
●しかし、部分的にはこれほどの精度で管理製造されたパーツを使ったエンジンなのに期待して乗るとがっかりする。この精度・スペックが乗り味に全く反映されていないと思う。

 
 

L)ピストン+リング+ピストンピン+サークリップ
R)コンロッド+キャップ+ボルト

●ピストンヘッドEXバルブ接触痕。
2番ピストンの接触痕が一番大きい(3・4番弁)。ルーペで確認した限りでは欠け・メッキ剥離等無く変形のみのようである。

●ピストン裏。
ピンボス部に重量調整用と思われる突起があるが、4個共に未加工のままである。鍛造ソリッドスカートでピンオフセットは「ゼロ」。見た目かなり無骨で重い。クーリングチャンネルも無ければ、オイル戻り穴も少ない。

●ピストン側面の状態は非常に良いようで、見る角度によってはアタリが分からない程である。4個共に同様でこれも驚異的である。

●アルミニウムライナー内壁のニカシルメッキの状態も良い。上下死点にもしっかりホーニングクロスハッチが残っており偏摩耗も無い。

クロスハッチ

●以前確認したNA STDエンジンのキャストピストン+キャスト鉄ライナーはかなりの距離を走っていたこともありここまで状態は良くなかった。走行距離なりの状態で、ピストンサイドのアタリはハッキリとでていたし、ライナー上死点のホーニングクロスハッチは消えていた。

ピストンリングは普通に3本である。コンプレッションリングにはプライマリー、セカンダリー共にちゃんと裏表の刻印がある。
●オイルリングのエクスパンダは通常のラダータイプではなく鋼線に焼入れリボンらしきものをらせん状に巻き付けたような構造でピッチの荒い部分が2カ所ある。この部分がリング溝オイル穴にくるように(またはオイル穴を避けて)組めば良いのだと思う。

ピストンリングは普通に3本

●今回ピストンリングセットを単体で購入したが、アルミライナーの場合、マーレによると本来はリングセット、ライナー、ピストンをセットで購入交換するものらしい。よくありがちなリングのみ新品に交換の場合、合い口隙間は調整出来てもスラストクリアランス、インナーギャップが現実調整不可能であるのが理由らしいが、これも驚きである。

]●これを逆手に解釈すれば’リングまたはピストンリング溝の精度が悪くバラツキがあるので組み合わせて販売している、安易なリング交換は良くないともとれる。

●確かに密閉度の確保にはリング張力よりも各隙間の管理の方が重要というのをどこかで読んだ事がある。

●しかし1番ピストンに2番に付いていたリングを組んでも、または新品リングを組んでも、触った感じでは何も違いはない。折損や摩耗があれば新品に交換しても合い口隙間を規定値に調整しておけば特に問題は無いと思う。

●今回は問題無かったのであえて再使用した。

 

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