ロータスエスプリのバルブクラッシュ!(その4)
●ヘッドガスケットはS4以降の両グロメット+ファイバータイプである。以前のメタルタイプ(英車らしくクーパー製)を使いたかったのだが、現在ではもう手に入らないようだ。
●このガスケットはS4のブロックに合わせてあるらしくガスケット外周のゴムのビートがオイルラインの部分のみはみ出してしまう。締め付けてしまえば大丈夫だとは思うが念のためこの部分のみシール剤を薄く塗布しておいた。
●ブロックデッキEX側に2カ所位置決めピンがあるが、小さく距離も近いのでガスケットに対してはほとんど無効の感じである。
●全ての900エンジンに使用可能となっている、
●がSE以前のエンジンに使用する場合、SE以降のスタッド(軸中心にセンタリング窪み跡が付いている新しいもの)に交換せよとなっている
ブロック
●ブロック、ヘッドはイギリス車では馴染みのAE製である。
●特にブロックについては、S4から、外まわりの仕上がりが格段に向上しているらしい。
●構造の変更はないが(パワステポンプブラケットの形状等)、鋳型が新しくなっているらしく、AEマークではなくロータスマークが入っている。S1時代から使い回しの型がSEあたりで限界になり、型を作り直したという説が有力である。S1,S2辺りのブロックはリブがビシッと立っているらしく、ニューシェイプで怪しくなって、SEで限度に達したのだろうか、SEのブロックの仕上がりはエスプリ史上最悪であるらしい。
●しかしなぜか、S4以降のブロック、ヘッドは材質がやわらかいらしく、よく雌ねじ潰れやデッキ歪みが起こるらしい。S1、S2など古くなるほどほど堅くて、ブロックデッキ面研、ヘッド面研、シート圧入、ポート削りなどをしていると、明らかにロータスマーク入りの方ははやわらかいらしい。
●このガスケットから(S4から)シリンダヘッド取り付けナットの締め付け方法がアングル締めを指定されている。
●とはいっても内容はたいしたことなく、 i) 20 Nm ii) +75 degrees iii) +40 degrees iv) Wait 5 minutes v) +20 degrees
●要約すれば単に20Nmで締めた位置から135度締めろというだけである。iv)の「5分待つ」に何の意味があるのか?5分待てばスタッド捩れがもどるのか?この表記では5分待とうが、10年待とうが、結果的に20Nmで締めた位置から135度である。
●ここ数年前から流行の塑性締めの場合は通常、簡単な略式のものでも「強トルク締め~待機~全緩め~弱トルク締め」の行程があり、全緩め~再締め付け行程は10分以内に終了させろ等の指示がある。そしてこの後にアングル締めを行うのが普通である。
●ちなみにこのガスケットを、この中途半端なアングル法とS4以前のトルク法締めの両方でやってみると、何のことはない、結果(マーキングの位置)は同じだった。
●コンロッドメタルはJAEから強化品が発売されているが使用せず、純正品を組み付けた。 とくに意味はない。
●ピストンリング合い口位置をずらさないために、クランクピンとコンロッドビッグエンド上側を合わせつつ、クランクを回してピストン位置を下げる。
●サービスノートどおりプラスチゲージでクリアランスを測定した。 メタルはSTDサイズで全て規定範囲内に収まった。
●試しに、いちばん狭いところと広いところを入れ替えてみたが、ほとんど変化は無かった。 メタルの精度品質は問題なさそうである。
●ピン中心で全て0.03~0.038mmで収まったので良しとした。 しかし最近の国産エンジンと較べ豪快に広い。 ●クラッシュハイトが少し足りない気がする。 ストレートエッジをあてがえば確かに突き出ているのだが、指触では分からないほどである。
●コンロッドキャップのボルト締め付け指定トルクは何と、114~117Nm!
●スラストクリアランスの規定値は0.1~0.25mmで、これも問題なかった。
●シリンダヘッドとカムホルダーのシールはここもまたロックタイトの嫌気性シール剤が指定されている。
●インマニガスケットもJAEから強化品が発売されている。メタル製で樹脂コーティングしてあるようだ。ノーマルの紙製よりも良さそうな感じなのでこちらを使用した。
●インマニ取り付けと同時にウォーターポンプも取り付けた。
ウォーターポンプ
●ウォーターポンプは92年のみに見られるの形体をしている。メカニカルシールはS4、プーリーフランジもS4と同じラージタイプ。
●しかし、S4では省略されるエアポンプブラケットの取り付け穴がある。
●センターベアリングは共通
●ちなみにS4ではバキュームエアポンプを廃してPSポンプに変え(ブレーキがマスターバックの無い液加圧式ブースター=エアポンプが必要 無い)、空調フラップコントロール用に別途電動バキュームポンプを新設している。
●過去、この部分以外でもデスビを廃し、駆動軸(オイルポンプ軸)は残して、デスビ本体をチャージクーラーポンプにとって変え、点火は DI化するなど、設計の古いエンジンをあの手この手で時代の進化に何とか対応させ、延命させてきたロータスのこのようなアイデアにはとて も感心する。
●ウォーターポンプへのホース接続はストックのノルマ製ホースバンドは使用せず、全て日産純正のクリップに変更した。特にインマニ下な どは、のちにゴムが締め付け圧変形(痩せ)で増し締めしようにもアクセスが困難なのでクリップは有効だと思う。
●各ホースはバンド部分が締め付け痩せしているが、それ以外は特に劣化していなかったので十分再使用できる状態だった。接続部からの漏 れに対しても有利そうなのであえて再使用した。
●接続部には内面(接触面)も含めて防錆と取り外し易さを期待してシリコンペーストを塗った。組み付け後もホースは滑り回転するがクリ ップ留めなので漏れることはない。これは以前から必ずやっている。
●国産の薄くて軽いホースは劣化すると風化して堅くバリバリになるが、15年も経っているのに柔軟である。表面には茶色ぽくゴムの老化防 止剤が染み出し光っているが、再使用に不安はない。この事実はとても以外である。
●サージタンクとブロックを繋ぐインマニ補助ステーが役不足かもしれない。
●何とかしたいが、ここをあまりに強化するとエンジン膨張で最悪クラックの可能性があるかもしれない。
●STDのセンターステーはそのまま残し、前後にパイプでステーを製作し追加した。都合良く、フロントはACコンプレッサー、リヤはスターターモーターのブラケットがブロックにありボルト共締めで固定できた。
●タイミングベルトのテンション調整はサービスノートでは1番シリンダーを圧縮上死点にして行うよう指示されている。各プーリー間のベルトテンションが何とも微妙な位置であるが、EXプーリー~クランクプーリー間は張った状態になる。
●テンションの測定位置はオイルポンププーリー~INプーリー間の真ん中辺り、サーモスタットハウジング上が指示されている。
●フライホイールのポインタの信憑性を確かめるためロッドを延長したダイヤルゲージをプラグホールから挿入し上死点を出した(一般的な方法)。大丈夫である、ほぼ一致している。
●エンジン稼働以降のベルトテンション点検を考え、上死点が正確に出せるようブロック下面を基準にしてフライホイール前面にマーキングをしておいた。ここは外部にむき出しである。
●ここに関してはベルトが新品だからといって強めに張るようなことをしてはいけない。冷間(10~20度)でバローゲージの基準値に張り、クランクを回転させ再度確認する。
●国産のベルトエンジンと較べれば、かなりテンションをかけることになる。冷間にしては、手で押しても明らかに強めである。
●エンジン暖気後、温間でもベルトはほとんど熱膨張せずにエンジンの熱膨張の方がはるかに大きいので、ベルトはパンパンに張った状態になる。これなら多少オイルが付着しても、まずコマ跳びしそうにない。
テンション
●通常のベルトゲージでもテンションを測っておいた。サービスノートの規定値と単位換算してもほぼ同じである。やはりこの強いテンションで良いみたいである。
●ちなみにM氏ショップでも車検等で入庫してきたエスプリは必ず指定のバローゲージで点検するそうである。
●ベルトテンションは各メーカーとも個々のエンジンの運転温度、最高回転数など様々な要因に対して厳密な検証をして出してきた数値らしく、一般的な基準値などはあてにしてはいけないそうである。唯一信用できるのが純正ベルトと規定のテンションらしい。
●エスプリの場合、絶対的なテンションが高いのでカンで張り具合を決めるのは性能を発揮できないばかりかトラブルのリスクが非常に高くなると思われる。
●バルブタイミングを見るとカムプーリー角で基準より約2.2度くらい進んでいる。が、性能的には遅れているよりはるかにいいはずなのでOKである。エスプリのベルトは疲労、経年で伸びることはあっても、縮むことはないらしいので、こちらの方が都合がいい。
Greatest thanks! to Mitsuyama Motors
Special thanks
Technical Shop HAPPY
MIKI Preparation
P.U.K. Marcus Esprit Racing…
Paul Matty Sportscars
and
Authentic Cars
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